やさしい手のひら・中編【完結】

最後のシーンのため私も緊張が走る。だんだんと太陽が沈み、空がオレンジ色に変わっていく

「亜美落ち着いてやろう」

新くんに言われて私は頷く

遠くで健太も見てくれている

「カット!」

私のぎこちない動きで一度止められ、私は監督さんから指示を受けた

「キスできるか」

「えっ?」

「私と新くんですか?」

「そうだ」

だって・・・健太がいるのに新くんとキスだなんて・・

「新にはちゃんと言ってある」

「わかり・・・ました」

健太には監督さんの話が聞こえていない・・・祐介くん達としゃべっている

見られたくない。でも始まれば健太は私を見る

仕事だから。仕事だから仕方がない・・・

もう一度撮り直し、だんだんとキスシーンが近づいて来る

「亜美」

向き合う私と新くん

新くんは真剣な顔で私の腰に手を回し、ゆっくり顔を傾けた

私は自然に涙が零れる

夕日をバックに私と新くんは唇を重ねた

長いキスの後、私の両頬を挟み、おでことおでこをくっつけ笑い合う

そしてもう一度キスをし、お互いを確認するかのように抱き合った

「お疲れさまでしたー」

スタッフの合図とともに終了の声が聞こえた途端、私は目の前が揺れ、めまいを起こして倒れていた

「亜美!」

私を呼ぶ声で私は目を閉じた。ユラユラ揺れている。この温かい胸は健太だね・・・