やさしい手のひら・中編【完結】

私達と入れ替えで健太が海へ向かう

すれ違う瞬間

「一緒に飯食おうな」

と言って通り過ぎた

私はすぐ振り向いて健太を見たけど、健太は背中を向けたまま歩いて行った

「行くぞ」

「あっ、うん」

今の新くんに聞こえてたよね…

砂浜に戻り、健太が一人で歌うシーンを見ていた

切なそうに愛しそうに歌う

歌の歌詞にジーンときてしまう

私を思って健太が作ってくれた曲

私は健太から目を離さず見ていた

そして私の隣で新くんも健太を見ていた

「俺の方がかっこいいのに」

と、意地悪そうに笑って言った

「はあ?自分で普通言う?」

「見たからに俺だろ」

「自信満々だね」

「健太に負けたくないからな」

「…」

なんて言葉を返していいのか戸惑ってしまった

「俺、かなり意地悪だな」

そう言って私から健太に目線を移した

無理して笑っている新くんの姿が痛いほど私の胸に染みた