居酒屋を出てから健太の顔を見ることが出来ないまま、タクシーが止まるのを歩道で待っていた

健太も私に話し掛けてくれず、この沈黙がとても落ち着かずにいた

「真っ直ぐ帰る?」

「う、うん」

いきなり後ろを振り向き私はドキッとしてしまった。そしてギュッと私の手を握り、

「寒いだろ」

健太はフッと笑ってくれた

「怒って…ないの?」

「さっきの?だって亜美悪くないじゃん」

「でも…」

「あいつは亜美を助けてくれて、救ってくれた。だから今の俺はあいつにもんくを言える立場じゃない」

穏やかな口調で言った

「他の奴だったら殴ってたかな」

本当にそう思ってる?やせ我慢じゃないの?

「あいつには感謝してる」

遠くを見つめながら瞬きもせず言った

健太は握ったままの2人の手を自分のジャンパーのポケットの中に入れ、私の手を力強く握った

そして私も力強く握り返したんだ