やさしい手のひら・中編【完結】

ガチャッ

インターホンを鳴らさず、私のあげたスペアのカードキーで入って来た

リビングに近づいて来るのがわかり、私の足が震えだす

足音が止まり、私はゆっくりと顔を上げた

健太…

顔を見た途端、私の涙腺が緩みだし、一滴の涙が零れ、それから次から次へと涙が流れていった

健太も私の顔を黙って見ている

でもお互い声を掛けることなく、私が座っているソファに健太が座った

私と健太の間が空いていて、それが寂しかった

「俺ら帰ります」

凌がジャンパーを持ち帰ろうとすると

「帰らなくていいよ」

健太は凌を見た

「2人でゆっくり話した方が…」

健太は凌から目線を外し、

「仕事抜くて来たからゆっくりも出来ないんだ」

健太が言ったこの言葉に胸が痛む

「亜美…」

健太が私を呼んだ。いつもの優しい声ではなく、冷たさを感じる声で…