やさしい手のひら・中編【完結】

「ほら、もう泣くな」

ﾃｨｯｼｭを私にくれた

「泣き虫は変わってないな」

「だってぇ」

「ほら、わかったから泣くなって」

「仕事忙しいの？」

「忙しい時はめちゃくちゃ忙しいかな。今日は撮影が午前中で終わったけど、明日は生番組があるかな」

「あの番組で、一回だけ健太を見たよ。健太達が東京に行って2ヶ月ぐらいの時。私、健太見て泣いちゃった」

「うん」

健太は申し訳なそうな顔していた

「私ね。それ以来健太を見てなかったの。雑誌も一回だけ買ったけど、やっぱり辛くって・・・だから昨日1年ぶりに健太を見たの。いつもの笑顔の健太だった」

私は悲しみの涙ではなく、嬉しさの涙を流した

「会えてよかったよ」

笑って健太に言った。ほんとに嬉しかったから・・・

「亜美への気持ちは何ひとつ変わってない。それよりかこっちに来て、もっともっと愛しくなった。会いたくて会いたくて、どうしようもなかった」

「指輪しててくれて、ありがとう」

今も健太の右の薬指には指輪が付いていた

健太が私を引き寄せ、抱き締めた。健太の匂いがﾌﾜｯと私の鼻に入ってくる。この匂いが私を落ち着かせてくれる

何度この腕に抱かれることを夢に見ただろうか・・・

「亜美、この先俺が芸能人ということで嫌な思いをすることがあるかもしれない。でもその時は俺が亜美を守る。だから俺のことをずっと信じていてほしい」

わかってる。普通の人と同じように付き合っていけないことを・・・健太は芸能人だから

「うん。わかってるよ。それも覚悟でここにいるんだから」

「ごめんな」

「さっきから謝ってばっかりだよ」

「ごめん」

「ほら、またぁ」

健太と私はおでこをくっつけ笑い合った。久しぶりに心から笑えた気がした