やさしい手のひら・中編【完結】

「福田さん」

私の名前が呼ばれ私は診察に入ろうと思い立ち上がった

「俺も行く」

「子供じゃないんだから一人で行けるから」

そう言って、健太に笑いかけ診察に入って行った

女の先生が「はい、そこ座ってね」と言ったので私は先生の前に座った

「熱がちょっと高いわね」

私の心音を聴き、喉を見た

「これ採ってきてね」

と言われて尿検査のコップをもらった

「結果が出たらまた呼ぶからね」

「あの・・風邪ですか」

先生は一瞬黙って、

「尿検査の結果を見てからちゃんとお話しするからね」

それだけしか言ってくれなかった

診察室の近くにあるトイレへ行った。コップを窓ガラスの所に置き私は呼ばれるまで一人で待っていた

妊娠のことが気になり、もしものことを考えてみた

今、赤ちゃんがお腹の中にいても産むことはできない。健太に迷惑を掛けてしまう。健太は普通の仕事じゃない。芸能人であってこんなことが知れたら・・・

考えると怖くなる

まだ決まった訳じゃない。体調が悪くて遅れているだけ。そう思うしかなかった・・・

「福田さん」

呼ばれてドキッとしてしまった

「はい」

私は心臓に手を当てたまま診察へ向った