やさしい手のひら・中編【完結】

「このままじゃいけない」

私は暖かい格好に着替え、携帯と財布だけを持ち玄関を飛び出した

大きい道路まで走り、タクシーを停め、健太のマンションに向かった

どうしてかわからないけど心臓がトクントクンと音をたてていた

いないかもしれないのにここまで来て私は何をしたいんだろう

入るか入らないか入口で迷っていた

でも私は入ることをやめ、来た道を歩きだした

それは健太の部屋の電気が付いていなかったから…

明かりがないからいないってわかった。もしかしたら疲れてもう寝てるかもしれない

とっさに出て何も考えないで来た。ただ会いたいという気持ちだけだった。会ってちゃんと話がしたかっただけなんだ

私は満月の月を見ながら涙を拭いた

冬の空は空気が澄んでいてとても、くっきりと満月が見えた

歩いて帰ったらどのぐらいかかるだろう

体が冷えきっていて、また寒気がしていた

寒いのに私の体は熱くなっていた

どのくらい歩いたのかな

意識が朦朧とする中、自分のマンションまで歩いていた

「やっと…着いた」

エレベーターに乗ってからは意識がはっきりしていなくて、私は玄関に入ってから倒れてしまった