やさしい手のひら・中編【完結】

ただ泣くことしかできなくて、両手で顔を覆って泣いていた

私は熱があって誰かにすがりたい気持ちで、新くんの優しさに甘えてしまった。その行為が健太を傷つけてしまった

新くんのマンションに行ったことは健太がいるのにしちゃいけないことなのかもしれない

でもあの時、健太に電話をしても仕事を抜け出すことなんて出来なかったはず。健太一人のために仕事を中断することなんて健太には出来ない

私は健太にとって仕事の次だから・・・

♪♪♪~

「健太?」

携帯が鳴って急いで通話ボタンを押した

「俺ー」

グスン

電話は健太ではなく新くんだった

「なした?」

「ううん。なんでもないよ」

「泣いてるだろ」

「泣いてないよ」

「今、行くから待ってろよ」

「待って・・」

ブチッ

私が話している途中で切られてしまった

健太だと思って出たのに健太じゃなかった

私は携帯を持ったまま、何かを考える余裕などなかった

ピンポン

ガチャッ

健太が出て行ったままで鍵を掛けるのを忘れていて、新くんが入って来ていた

「具合悪いのか?」

息を切らして私の前で立っている

私は新くんの目を見た。新くんの優しさにまた甘えてしまおうとする自分がいた

「なんともないよ。具合も悪くないし」

「じゃ、なんで泣いてんだよ!」

私の左腕を引っ張りそのまま私を新くんの胸に押し付けた

「なんでもないのに泣く奴なんていないだろ。泣きたいならいっぱい泣け」

そう言って私の頭に手を置き、頭を撫ぜてくれていた