やさしい手のひら・中編【完結】

健太がいることは嬉しいのに、新くんのﾏﾝｼｮﾝからの帰宅に後ろめたい気持ちがあり、私は心臓をﾄﾞｷﾄﾞｷさせながﾘﾋﾞﾝｸﾞに行った

ｿﾌｧに座っている健太が目に入った

健太は私が来たことに気付いて、私を冷たい視線で見ていた

「今までどこにいた？」

不機嫌で怒っている顔で私に低い声で聞いた

「あの・・・私・・」

健太の視線が怖くて私は健太の顔を見ることもできず、うまくしゃべれることもできない・・・

「わ、私・・・」

ここまでしゃべれるのにそのあとの言葉が出てこない

「誰といた？」

座ったままの健太の拳は握ったままで私はその手を黙ってみることしかできず、どうしても目を合わせることができないでいた

「携帯はここにあるし、来てもいないし。心配するの当たり前だよな？」

私は首を縦に振った

「俺に言えないことなの？」

「私、熱出してその時たまたま新くんが来て・・・私を看病してくれてたの・・・」

言ってしまった

「どうして俺に電話しないんだよ!」

怒鳴るように健太は大きい声を出し、私はびっくりして体がﾋﾞｸｯとなり涙を流していた

「だって、電話したって仕事でしょ!助けてって言ったって着てくれないじゃん!」

会えなかった辛さが今になって私の口から飛び出した

健太は黙り込んでいた

「わがまま言っちゃいけないと思って、ずっと我慢してたのに、それなのにそんなに怒らなくたって・・・」

悔しくて涙がﾎﾟﾛﾎﾟﾛ落ちていく

「新くんのﾏﾝｼｮﾝに行ったことは健太にとって嫌なことかもしれないけど、新くんは誰もいないのに一人でここに置いて帰れないって。だから新くんのﾏﾝｼｮﾝに連れて行かれて・・・」

「もういい」

健太は車のｷｰを持ち、立ち上がった

「帰るわ」

そう言って玄関に行き、それ以上何も言わず帰ってしまった

どうして？どうして帰って行くの・・・

私は足がすくんで動けなくなっていた

健太を追いかけることもできないまま・・・