やさしい手のひら・中編【完結】

車に乗ってからも私も新くんもお互いに口を開かず、目の前にマンションが見えてきた時

「お前、正月東京にいるの?」

マンションの入り口の前で車を停め、新くんが私の顔を見て言った

「ううん、実家に帰るつもり」

「帰る前にデートな」

さきほどの沈黙がなんだったかのように普通にしゃべり掛けてくれた

「時間があったらね」

「はあ?デートするって言ったよな?」

「はいはい。言いましたよ」

私は投げやりな態度で答えた

「連絡するから」

「わかった。看病してくれてありがとね」

私は車から降りて荷物を持ち新くんを見た

「病み上がりだから無理するなよ」

私を心配してくれた

「うん」

「じゃあな」

そう言って新くんは私に手を上げ帰って行った

私は部屋の前まで来て鞄からカードキーを出し、鍵を解除しドアを開けた

「えっ…」

どうして…いるの?

玄関には健太の靴があった