アパートの駐車場にリンの車がとまってるのを確認して、俺は静かに黒い軽の後ろに車をとめた。


ドアを開け、生暖かい風の中に出て、ゆっくりと噛み締めるように一歩一歩リンの部屋へと近付いていく。


もしかしたらこれが最後になるかもしれない。


そう思うとリンの隣の部屋の前にある邪魔くさかった20インチのタイヤでさえ、抱きしめたくなってしまう。


きっとたまに見掛けるデカイ黒のマービーのだろうな。


タイヤで狭くなった通路を抜けリンの部屋の前で立ち止まった。


昨日もう来るなって言われたけど、勝手に入っていいものだろうか?


少し悩み、意を決した俺はドアノブを回した。


カチャ。


……あ、開いた。鍵が掛かってないだけで少し救われた気がする。