阿部さんは親分肌だけどわがままで人も食べ物も好き嫌いが激しく、なぜかあちこちのヤクザに顔が利く人。


一度阿部さんを知らずに絡んだチンピラが、ド迫力の一喝で一瞬にして蹴散らされるのを見た事があるけど。


眼光鋭いいかつい顔にししゅう物の服をやけに好むもろヤクザな見かけによらず、意外と気の小さい部分もあって、俺的にはしょうもない悪ガキにしか思えない。


でも小耳にはさんだ数々の武勇伝に破天荒ぶりは一応認めてる。


そんな阿部さんは基本的に男女関係なくちやほやされてきたらしく、盾突く「お嬢」を「怖い怖い」と言いつつ一目を置いた口ぶりだった。


そして俺は阿部さんに連れられて、ちょうど正月を迎えた頃に「お嬢」が働く店に一緒に飲みに行く事になる。