「リトさんと一緒においでよ」
莢香との仲に亀裂が入る前、そう誘われていた。
龍斗も莢香がそこでバイトをしていることは知っている。
だけど龍斗と初詣には行きたいけど、莢香には会いたくないと思った。
時間は8時。
買ってきたお弁当を龍斗と二人で食べる。
キッチンのない部屋…
龍斗は毎日何を食べているのだろう?
お弁当を見ながら少し寂しい気持ちになった。
私にはまだ知らないことが多すぎる。
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―…
「あれ?龍ちゃんピアスしてたんだ…」
食べ終え、こたつでくつろぐ龍斗に目を向けた。
そこに見えたのは龍斗の耳に光る小さなシルバーのリング。
ピアスはしてないと思っていた。
「ん?あっこれ?ピアスて言っても穴は開いてないよ」
龍斗はスッと耳からそれを取ってみせた。
「耳にただ挟むだけのやつ♪」
耳を見ると確かに穴なんてなくて、手のひらに乗せられたシルバーのリングはバネで耳に挟めるようになっていた。

