Dear HERO[実話]




「凛ごめん。カラオケ行きたかったでしょ?」



もちろん行きたかった。


だけど私は「ううん、いいよ。大丈夫…」

としか言えなかったんだ。





「莢香……」



駅のホームで電車を待ちながら、ずっと聞きたいことがあった。



「ん?なに?」


莢香は真剣な顔をする私に目を向ける。



「莢香って…リトさんのこと好きなの?」


莢香の顔を見れなくて、私はホームからどこまでも続く線路を見つめた。



「えっ…何言ってんの。好きじゃないよ…」



「最初の飲み会のときリトさんと一緒に部屋出て行ったりしてたし、弘也には興味ないみたいだったから…もしかしたらそうなのかなって思っちゃった」



「そんなこと考えてたの?それはないから大丈夫だよ…」


莢香はそう言うと微笑んだ。



「そっか…良かった安心した」



莢香の言葉を聞いて安心した私は自然と笑顔になっていた。

それから電車がくるまでの間、二人は一言も話さなかった。