Dear HERO[実話]




「莢香…今日朝から体調悪かったんだよね?」



俯く莢香はその言葉に黙って頷いた。

私がそう言うと龍斗はそれ以上何も言わなかった。



「私も帰るよ…」



龍斗や歩美に目配せする。


本当は帰りたくなかった。

もっと龍斗と話したかった。

一緒に居たかった。

同じ時間を過ごしたかった。



そしたらもっと違う龍斗の姿を見れたかもしれない。

さらに一歩近付けたかもしれない。



龍斗も同じ気持ちだったらしく、納得のいかない顔をした。

不機嫌なままだ…


しかし莢香の体調も心配だし、一人で帰らせるわけにはいかない。

私は自分の気持ちを抑え、莢香と一緒に店を後にした。