Dear HERO[実話]



私はブルーシートに座る親子の姿に目を向けた。

そして居るはずのない親子を見つけようとしたんだ。


龍ちゃんの家族が居るかもしれない……


家族が来ていれば龍斗が声をかけてくれるはずなんてないのに。


もしかしたら……そう思えて仕方なかった。



仮に居たとして、見つけて何ができるのだろう。


どうすることもできないのに……

傷口がどんどん大きくなるだけなのに……


それでも私はショーが始まるまで、たくさんの親子の姿から目が離せなかった。




14時近くになると“最初は人間の姿として適役で出る”と言っていた龍斗の姿をお客さんの中に見つけた。

そしてその姿が瞳に写った瞬間、私は動けなくなった。



客席の一番後ろに立って、数メートル先に龍斗が居る。


でもそこは私が居る場所とは逆の位置。

手を伸ばしても届かないところ。



最終確認のためか龍斗の目はステージを見つめている。

そしてその瞳が横を向くことはなかった。