いろんな種類の魚が泳いでいるたくさんの水槽を見て回る。
薄暗い部屋に放たれる水槽の明かりはとても綺麗だった。
休みの日だというのに今日は人が少ない…
小さな水族館だからこれが普通なのかな。
そんなことを思っていると壱春は私の腰に手を当て引き寄せた。
自然と壱春の胸に頭がくっつく。
ドクン…ドクン…
そのまま頭を傾けながら、色とりどりの魚たちに目を向けた。
広い海に出ることができず、狭い区切られた空間でたくさんの魚たちが泳いでる。
流れにのって必死に、時にぶつかりそうになりながら…。
それはこの世界を必死に生きようとする自分たちの姿にも見える。
上も下も前も後ろも分からない世界を、ただ我武者羅に進んでる。
そんなときに求めるのは隣に居てくれる人。
壱春の腕の中は適度な緊張と安心感があった。
一度離れた二人だからこそ、相手を大事に思う気持ちが重なる実感がある。

