Dear HERO[実話]



ヨリを戻してから一週間後 ―――

久しぶりのデートに出かける。


1月中旬…

潮風に当たりたくても、海沿いを走る車の窓を開ける気にはなれなかった。


運転する壱春の横顔。

私がプレゼントしたジャケットを着る壱春の姿に自然と顔がほころぶ。



水族館に着くと、パラパラと雨が降り出した。

入口から建物に入るまで、自由に使えるように置いてあるビニール傘を差して歩く。


ポツ…

  ポツ…


と傘に落ちる雨の音も、壱春と二人で聞くと寂しくは感じなかった。

雨に濡れて水が滴り落ちる傘。

私は閉じた後、その傘を畳もうとした。




「何してんの?」



いちいち畳むのはめんどくさいと言わんばかりの壱春の顔。