イチだ…
ドアを開け、目の前に停まる壱春の車に乗り込んだ。
助手席に座る私を壱春はじっと見つめる。
中々その目を離してはくれない。
「な…なに?」
戸惑いながらちらっと壱春の顔を見た。
「浴衣…似合うね♪」
いつもとは違う姿に、壱春は目をキラキラさせている。
そして私はそんな壱春に微笑み返した。
人が混雑する道を避け、暗く細い道を通って車を走らせる。
祭りの会場を離れ、川沿いに車を停めた。
そこは壱春が知るベストポジション。
車を降り目の前を流れる川の音に耳を傾けながら、夏の風が心地よく吹き抜ける。
…ドーン!
大きな音とともに川の向こうから花火が上がった。
真っ暗な夜空に上がった花火。
その姿が川の水面に映り、幻想的でまるで水の中から花火が上がってくるようだった。
会話もすることなく、二人で次々と上がる花火に見入っていた。
綺麗だね…

