Dear HERO[実話]



あの日、樹の隣で花火を見上げながらそう願った。


いつか樹と…

そう願っていたはずなのに、私の心はあっさりと龍斗に向けられ、今隣に居るのはまだ出会ったばかりの壱春だった。



「別々に行こう♪」


今でもそのことに憧れを持っていた私は、ルリたちとは別々に行動することにした。

だから浴衣だけは一緒に着せてもらって、お互い弾む心を抑えながらルリと別れた。



気付けば辺りは真っ暗。

壱春の仕事が終わるまで車の中で待つことにした。

遠くで祭りに盛り上がる賑やかな声が聞こえる。


その声を聞きながら暗闇と静けさの中で一人待っていた。

願っていたことがもうすぐ叶うことに胸を躍らせながら…



30分後…

鏡を見ながら髪型を整えていると、車内が車のライトに照らされた。

白い一台の車が曲がってくる。