Dear HERO[実話]






「でも…自分の身は自分で守らないと…」





「………」




そう…だよね…


確かにそうなんだ。

本当に危ないとき自分の身を守れるのは自分しかいない。


でもね?

力の差にどうしようもないときもあるんだよ。

壱春の言葉が冷たく感じた。


龍斗が言ってくれた言葉をどこかで期待していたから。



「俺が守ってやる」


その言葉だけで救われていたから。

その言葉がもう一度欲しかったんだ。



欲張り…


隣に居るのは龍ちゃんじゃないのに…

あの香水の香りも、包み込んでくれる腕の強さも違うのに…。





「凛…」


そう言って壱春に手を取られ、ベッドの横に立たせられた。

その行動に私は不思議そうな顔で見上げる。


私を見つめる壱春の目は真剣で真っ直ぐで、引き込まれてしまいそうだった。


部屋の中に聞こえるのは二人の呼吸だけ…


見つめたまま何も言わず引き寄せ、その長い腕で抱き締めた。

壱春より20cm以上も小さい私はその腕の中にすっぽりと収まる。