Dear HERO[実話]



そして壱春も龍斗と同じように黙って私の話を聞いてくれた。

しんっと静まり返るホテルの部屋に私の声だけが響く。


壱春がどんな顔をして聞いているのか、見ることができない。

どんな目で見られてるのか恐い…。


話を終え口を閉じると沈黙だけが時を刻んだ。


私の話を聞いて壱春は何を思ったのだろう。

“めんどくさい”そう思われたかな…。


やっぱり話さないほうがよかったのかな…



静まり返る室内。
いつも気に留めない呼吸の音がはっきりと聞こえる。




「そっか…」



壱春の言葉が沈黙を破った。



「………」



「そんなことがあったんだ…」




声だけが横から聞こえてくる。

視線を感じながらも、壱春に顔を向ける勇気はなかった。