Dear HERO[実話]





「どうした?」



それでも声をかけてくれる壱春に、私は必死に恐怖を取り払おうとした。




「凛?話して…」



体が震えてる。
壱春の姿を見れない。

心臓の鼓動が静まるどころか早くなっていく。

話すのが恐いんだ…。


壱春は片方の腕で頭を支えながら、涙を流す私を見つめていた。



「何があった?」



こんな姿を見せてしまった以上、隠していてもどうしようもないこと。

天井を見つめたまま、ゆっくりとあの日の出来事を話し始めた。
淡々と言葉がでてくる。


そしてあの日のことを思い出すと同時に、同じ話を龍斗にしたときのことを思い出していた。


そのとき言われた一言。


一生忘れることができない言葉を龍斗は口にしてくれた。

その言葉は私を救ってくれたんだ。