「先週仕事してるとき、肺が苦しくなって病院に行ったんだ…」
「…うん……」
「レントゲン撮ったら影が映ってて…癌かもしれないって言われたよ」
「………」
驚きのあまり声がでない。
奏汰の話を聞きながら、開けられた窓からスズメの声が聞こえた。
チュンチュンと晴れた空が嬉しくてはしゃいでいる。
私にはそんなスズメの姿が遠くに感じた。
「明後日、大きな病院に行ってくる。でもたとえ癌だったとしても誰にも話さず、仕事も最後までやり遂げようと思ってる。だから最後に凛に会いたかった。ごめん…引いたよね…?」
一点を見つめながら、唇をかみ締めた。
「引いたりはしないよ。ただビックリして…治療すれば治るんじゃないの?」
あまりにも突然で・・・頭の中を整理できずにいたんだ。
「うん、そうかもしれない。でも仕事辞めることなんてできないし、家族にも迷惑かけたくないんだ…」
電話先の奏汰は落ち着いていた。
「まだ癌と決まったわけじゃないのに、何でそんなふうにマイナスに考えるの?」
少しでも希望があるならそれに賭けてほしいと思った。
この時、私の頭の中は奏汰の話のことでいっぱいで聞いた話をそのまま信じ、冷静に考え直すことができなかったんだ。

