「好きな人とはどう?うまくいってる?」
いつか聞かれると思っていたことを樹に聞かれ、一瞬戸惑った。
樹に見つめられながら、嘘を言うことはできない。
「うん…気持ちは伝えたけど、付き合ってはないよ。樹くんは今好きな人がいるんだよね?」
樹がどんな女性を好きになったのか、私はこの日それが一番聞きたかった。
昔、カズに言われた…
『凛ちゃんは今まで樹が付き合った人と全然違うタイプだからね』
この言葉は私の心の中にずっと引っ掛かっていた。
樹が今好きな人はこのときカズが言っていた、私とは違う樹がよく付き合っていたタイプの女性なのだろうか。
もしそうならどういう女性なのか気になって仕方なかった。
「うん……好きな人いるって言ったけど本当はいないんだ…」
「…えっ?どういうこと?」
思ってもいなかった答えに、私は樹の顔を覗き込むようにして見た。
そんな私の眼差しを逸らす樹。
そして目を合わせないまま答えた。

