Dear HERO[実話]



「わかりました。ちょっと待ってくださいね、すぐに入れますから…」


そう言うとすぐにストラップに名前を彫り始めた。



「凛も決まったみたいだね♪」



ルリは私とおじいさんの会話を聞いていたようだ。


5分程するとおじいさんが名前の入ったストラップを持ってきた。


「これでいいですか?」


そこには綺麗に彫られた【Ryuto】【Rin】の文字があった。



「はい。ありがとうございます!」



そう言われておじいさんは満足そうに微笑むと、ストラップをそれぞれ袋に入れてくれた。




卒業旅行から数日後 ―――

私は短大を卒業した。


しかし結局、莢香との仲が完全に戻ることはなかった。

それは私が莢香を避けていたから…。


卒業式当日も一言も話さず、目を合わすことすらないまま一日が過ぎた。


式の後はいろんなところでフラッシュがたかれていた。

私もルリや周りの友達と一緒に写真を撮る。

でも莢香とは一枚も撮らなかった。


だからたまに見るアルバムにも莢香の袴姿は残っていないんだ。


同じように莢香のアルバムにも私はいない…