「樹くんとは別れた…」



教室の片隅でそう告げる私をルリは何も言わず見つめていた。

ルリとは大学で同じ教職を選考し一緒に授業を受けるうちにいつのまにか仲良くなっていた。


美人で小さく細い体は思わず守ってあげたくなる。

だけどその外見からは想像がつかないくらいしっかりしていて頼れる存在だった。

いつも正しい答えで私の背中を後押ししてくれていたから…



そして樹と別れたことを話したのはルリが初めてだった。

莢香に告げる気にはなれない…


莢香に話せばなぜ樹と別れたのか理由を聞かれ、龍斗のことを話すことになるから。

できるだけ莢香に龍斗の話はしたくなかった。




「そっか。私は正直になって良かったと思うよ。龍斗さんのこと好きなんでしょ?」



ルリが私の顔を覗き込む。

その答えを確信しているかのように…


ルリに聞かれ、自分の想いを見つめなおしてみた。


樹に向けることができなかった龍斗への想いを…