Dear HERO[実話]


キーを回しエンジンをかける。

ブォン!と大きな音とともにエンジンがかかった。


少しずつ動き出したジェットに私は興奮していた。

だんだんとスピードが上がってくると、体をかすめる風が気持ちよかった。


海の風ってこんなにも心地いいんだ…



「んー…やっぱ今日は波があるからあんまりスピードでないな…」


確かにこの日は波が高く、ジェット自体が波によって上下に激しく揺れていた。



「もう少しスピード出す?だしていいなら出すよ」



「…う…ううん、いい……」



これ以上スピードを出されたら海に投げ出されそうだった。

ふと気付くとそこは海の真ん中。
海岸が遠くに見え、シゲルたちの姿は全く見えない。


樹は海の真ん中でエンジンを止め、振り向いた。



「今度前に来てみる?」



「…うん。でも怖そう…」



「大丈夫、大丈夫…運転するのは俺だから」




………?


…運転するのは俺?


樹は後ろでどうやって運転するのだろうと不思議に思った。