樹はライフジャケットを着ると、海の中へと入っていく。
ジェットの状態を確かめると来るように手招きした。
私もライフジャケットを付け海の中へ入る。
8月の海。
少し濁ってはいるものの透明感はある。
水の冷たさが心地よかった。
先にジェットに乗っていた樹の手を借りて、私も初めてジェットの上に上がった。
バランスがとれず、今にも海の中に落ちそうになる。
元々あまり泳ぎが得意ではない私は落ちてしまったら…とライフジャケットを着ていながらも恐怖感があった。
「じゃあ凛後ろな。しっかり掴まっとけよ」
「……うん」
後ろから樹のライフジャケットを軽く握った。
すると樹は不満そうに振り向く。
「そんなんじゃ落ちるぞ。しっかり掴まっとけって」
そう言って私の手を掴み、腰に手を回させた。
樹の背中に頬がつくほどの密着感。
ドキドキしていた。

