あたしは専門学校に入学して仲良くなった友達たちに誘われて、いわゆるクラブに連れて行かれた。
比較的に静かな所が好きなあたしは、もちろんそんな音楽ガンガンでうっさい場所で楽しめるわけなくて、1人カウンターでウーロン茶を飲んでいた。

そこで出会ったのが郁未くん。慣れないクラブに疲れ切っていたあたしを連れ出してくれて、静かなカフェに連れて行ってくれた。

そのカフェの近くだから、といって郁未くんの家に行った。
正直郁未くんはかっこよかったし、抱かれてもいいって思ってたし。

それで順番はごちゃごちゃだけど、付き合うことになって…。


でも付き合い始めて1ヵ月もしないうちに郁未くんはあたしに飽きたらしい。
捨てられると思ってたけど、愛依が言うに、あたしは郁未くんのお気に入りだから、お金だけ渡して、あとは放置。必要なときだけ帰ってきて抱く。

郁未くんにとって、あたしはそんな女らしい。
(※あくまでも愛依の憶測)

でもあたしは信じてる。
『また今週も仕事が忙しくて帰ってこれないけど、待ってろよ。』
そういってあたしの頭を撫でてくれる郁未くんを。

このままいい子にして待っていれば、郁未くんはまた、あたしを好きだと言ってくれる。



「あっ、あたし今日バイトだから早く帰らなきゃ。ごめんね襟花。」
愛依が腕時計を見て言う。

「えー…そっか。じゃあ、また今度ね。」

「うん、ごめんね!あと、早く別れなさいよ!」

愛依はあわただしく席を立って、財布から1000円札を取り出すと、テーブルに置いて、出口へ急いで行った。

「別れないってば…。」
あたしは一人取り残され、残っていたシフォンケーキを口に放り込んで、会計を済ませ、店を出た。