「じ、じゃあ、なんでネットアイドルをしてたんですか」


泉士さんの手書きの名前が記された紙ナプキンを、思わず握り締める。
シワの寄ったそれは、原型を留めてはいない。

怒りや疑問を露にする俺とは対照的に、泉士さんは自分の使っていたストローを気だるそうに弄んでいる。


「なんでって言うけどね…
私だってアイドルをやりたくてやってたわけじゃないのよ!」


気だるそうな雰囲気から一転、泉士さんは怒りを見せた。
思わず感情的になってしまったことにハッとした彼女は、一呼吸おいて話を続ける。


「私ね、本当はロッカーになりたかったのよ」


ロッカー?
まさか学校などに置いてある棚のことではあるまい。
それならば、音楽ジャンルとしてのロックをたしなむ人のことを指しているのだろう。

アイドルとはまるで路線の違う彼女の暴露に、俺はただただ疑問符を投げつけた。



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