「ごめん、妃紗。今日も帰れねぇ」


丹後くんはいっつも、申し訳なさそうにそう言う。


だからあたしは、“何で帰れないの!?”とか聞けないんだ。


聞いたら丹後くんを、困らせちゃう。


聞いたら今の関係が終わっちゃうんじゃないかって、そうやって思う。


「そっかぁ。うん、じゃあね」


泣きたいのを堪えて、笑顔でそう言ってあたしは1人、教室を出た。