Toi et Moi

 書庫の片付けを一通り切り上げて事務室に入った。一番隅の桂君のデスクはいつも綺麗に片付いている。
「それがどうして探し物遅いかな」
 私は呟きながら、その隣の自分の席に座った。改めて桂君のデスクに目をやる。片付いているのは性格のせいもあるだろうけど、でもそれだけじゃない。もう準備をしているんだ。
「神谷さん」
 主任に呼ばれ、席を立つ。
「はい」
「企画展示の資料、大学の史料館に受け取りに行ってくれないかしら」
 私はあれ、と思う。
「まだ早くないですか、次は来月の半ばからじゃ」
「新年度だと向こうも忙しいんだって。桂君を使っていいから」
 主任が笑っている。私の腕を引いて耳元で話す。
「せっかく目録を隠したのに」