「でも凄いですよね」
なにが、と私は尋ねる。桂君は手紙を畳みながら声を弾ませた。
「明暦二年ってつまり、三百五十年も昔ですよ。そんな手紙が残ってる。携帯のメールなんて、一年前のも残っているかどうか解らないのに」
桂君の探していた目録は、まったく別の棚に入っていた。見つけて渡すと、桂君は不思議そうな顔をした。
「詩織さんって、いつも探し物早いですよね」
「そうかな」
「宗二郎の手紙も、探したら案外出てくるかも」
並べてみたい、と桂君が目を光らせる。
「でもね、桂君」
私は手紙を仕舞った方を見る。宗二郎さんの元から、どうにかしてこんな図書館の書庫に来てしまった一通の手紙。
「手紙はバラバラにあるからこそ、思いが通った証なのよ」
そして桂君の顔を見る。今だってそうでしょう。自分の出した手紙を読んで書かれた手紙が手元にある、そうやって思いが交差する。思い、が。
「手紙、か」
「詩織さん、書くんですか」
「別に」
とっさに目を反らせてしまう。今ここで、桂君に言えば済む。他には誰もいない書庫、でも肝心の言葉が出ない。
「あ、僕戻りますね、主任がこれ要るみたいなんで。ありがとうございました」
なにが、と私は尋ねる。桂君は手紙を畳みながら声を弾ませた。
「明暦二年ってつまり、三百五十年も昔ですよ。そんな手紙が残ってる。携帯のメールなんて、一年前のも残っているかどうか解らないのに」
桂君の探していた目録は、まったく別の棚に入っていた。見つけて渡すと、桂君は不思議そうな顔をした。
「詩織さんって、いつも探し物早いですよね」
「そうかな」
「宗二郎の手紙も、探したら案外出てくるかも」
並べてみたい、と桂君が目を光らせる。
「でもね、桂君」
私は手紙を仕舞った方を見る。宗二郎さんの元から、どうにかしてこんな図書館の書庫に来てしまった一通の手紙。
「手紙はバラバラにあるからこそ、思いが通った証なのよ」
そして桂君の顔を見る。今だってそうでしょう。自分の出した手紙を読んで書かれた手紙が手元にある、そうやって思いが交差する。思い、が。
「手紙、か」
「詩織さん、書くんですか」
「別に」
とっさに目を反らせてしまう。今ここで、桂君に言えば済む。他には誰もいない書庫、でも肝心の言葉が出ない。
「あ、僕戻りますね、主任がこれ要るみたいなんで。ありがとうございました」



