BlacK DoG

市立病院に私の身体はなかった。

認めたくないよ…、まだ生きていたいよ。


行くところなんてなくて、他に思いつく場所もなくて。
誰にも知られずに歩いていく。

時々犬に吠えられる。
視えるんだ、私のこと。



「………ったな」



…あの人…。
何処かで見たことある。

でも知らない人、だよね。
まだ忘れてることがあるのかな?




「朱音さん」


「あ…」


「やっと見付けたよ、朱音ちゃん」


「私、死にたくない…」




二人とも、困ってる。
幽霊が死にたくないなんて変な話だもんね。




「朱音さん、貴女は次の段階に進まなければいけません」


「次の段階?」


「私もただ視えるだけで、偉そうなことは言えませんが。貴女はまだ上に行ける。新しく生まれる為に、行くべきところへ行って下さい」


「生まれ変わるってこと?…でもそれは、私じゃない」




生まれ変わったら、どうせ違う人なんでしょ?
私は今しか私じゃない。




「イヤ…、イヤだよ。なんで私死んだの?やっぱりアイツがやったの?!」


「アイツ…?」


「あれ、アイツって誰だろう。なんで私…」



口からするっと零れた。
分からないけど、なにか確信した。


ストーブにはまだ早い。
朝から時間のかかる料理なんてしないし、いくつも電気を使ったりしない。
お父さんもお母さんもタバコは吸わない。


出火の原因て、なに…?