「おや、黙秘ですか?」
「…お前が喋ったら殺すって言ったからだろ?」
「あぁ、そうでした。どうぞ、喋りなさい」
優しい笑顔と優しい口調…なのに反抗を許さない迫力がある。
「な、なんなんだよアンタら!」
「神父ですが」
「フリーターだけど」
「そうじゃねぇよ!こ、こんな…警察に突き出してやる!」
「出来るんですか?放火犯の貴方に」
「なにを証拠に…っ!」
私が見てたと言いたいけど、きっと通用しない。
私の声は警察には聞こえないだろうし。
やっぱり私が殺すしか…!
「朱音ちゃん、ダメだ。恨む気持ちはよく分かる。でも、君が汚れる必要はないんだ」
「でも…!」
「貴女が恨みに囚われてしまえば、私は貴女を救えない。怨霊となってしまった魂は上に行けないんです」
「大丈夫、俺たちに任せて」
ユークさんが微笑みかけてくれる。
こんなに安心するのは、きっと幽霊と話せる人だから…なんだろうか。
嬉しくて、涙が出る。
ユークさんが優しく拭ってくれた。
「女性を泣かせるなんて、許されることじゃないな」
「ユーク、カル!」
路地裏に現れたのは、ジェットさんとクンツァイトさん。
「ポリスを呼んである。その得物をしまえ。お前がしょっ引かれるぞ」
「ご苦労様。少しは役に立ちましたね」
「本当?良かった」
「…言い回しに怒れよ、お前」
男性が4人も居ては敵わないと思ったのか、神父さんが怖かったからか、男はそーっと逃げようとした。
私が声を出す前に、神父さんは男の顔の真横にナイフを突き立てた。ぱらぱらと壁の欠片が落ちていく。
神父さん、男に背を向けているのになんで分かったんだろう…。
「誰が、行って良いと言いましたか?」
「あ、いや、その…」
「だから、得物しまえっての」
「し、証拠もねぇのにこんな…っ!」
必死に虚勢を張ってる。
叫んでるのに男の足はガクガクと震えている。
