薄っぺらい紙を一枚提出しただけで、世界が変わる。



妻。


その立ち位置に幸せを感じて、左手の薬指に新たに光るプラチナのリングを眺める。


エンゲージと同じブランドのマリッジリング。


愛の証。


内側に泰斗とかのこの名前が刻印されている。



「かのこ!」


待ち合わせ場所で5分もしないうちに現れた大学時代の友人たち。


「明里!公佳!」


久々に会う友人の顔は皆一様に様変わりし、大人の男女になっていた。


「いやー!相変わらずお人形みたいー!何々?人妻になったってホント⁈」

明里が矢継ぎ早に質問してくるのを苦笑いしながら答える。


照れ臭くて何て答えようかなやんでるうちに、明里に左手を取られる。


「いやー!結婚指輪ー!本当に結婚したのね〜。」


「嘘なんかじゃないよ」


笑ながら言うと、続々と集まる仲間にみんなでワイワイ挨拶し合う。



「よぉ。」


現れた森下に警戒しつつ、挨拶する。


「結婚したんだ。」
「したわよ、森下君のおかげで。」


間髪入れずに答えて顔を背けた。


「浮気してると思われたのかよ、なんだかなぁ。そんなんで離婚せずやっていけるのか?」


余計なお世話。


森下君に心配される筋合いないし。


「浮気なんかないわよ。ほっといて。」


ツンとした態度でそう言うと、他の仲間に混ざって話をした。