一緒に居て思うこと。


本当に如月がかのこ一筋だったのだ、ということ。


元カノとかの存在があるんじゃないかとしばらくは疑っていた。

しかし、何にもでてこないのだ。



一緒に暮らし始めてからもう1年が経つ。
大きなケンカはないものの、小さなケンカは多発。

でもきちんと話し合ってお互い不満を溜め込まないようにしてきた。


そんな時。


かのこの大学時代の友人が、仲の良かったメンバーで飲み会をするから来ないか、と連絡してきた。


「泰斗、行ってもいい?」


久々に早く帰宅した如月に、話をしてから許可を取る。


「…あいつ、居るのか?」

「あいつ???」



誰のこと?



…と、思った所で思い当たる人物が浮かんだ。


「あ…居る、、、かな。多分。」


…森下のことだ。

あれから何の音沙汰もないのに、まだこだわっているのだろうか。



「…ダメと言っても行くんじゃないのか。」
「行きたいけど、泰斗がダメって言うなら行かないよ。」


食後のコーヒーを飲みながら思案する。


「送り迎えはする。男と二人きりになるな。」



低い声で、ため息混じりに答える。


「それが出来ないなら行くな。」
「女の子の方が多いわよ。それに…あたし既婚者で話が回ってるから大丈夫。
そう言ったのは泰斗よ?嫁だって、言ってくれたでしょ?」


森下に向かい「うちの嫁」と。


おかげで森下から仲間に回り、すっかりかのこは既婚者になっていた。


「じゃあ、正真正銘【嫁】になろうか。」


立ち上がり近づいてきた如月が、胸のポケットから何か封書を取り出す。


差し出されたそれを受け取り、中身を確認する。



「これ…」


薄っぺらい紙。


「かのこの名前を書けば終わり。斉藤かのこから如月かのこに。

どうする?書くか?」


こんな大事なこと、そんなあっさりと…。

「もう…泰斗らしいって言うかなんていうか…」
「ん?」
「もう少しムードとか考えなかった?」
「あー、そういうの必要だったか?」


…わかってたけどね。そんな人だってこと。



「書きたくない、って言われるとか考えなかったの?」


「思わねぇよ。嫁にならないんだったら、かのこは今ここに居ないだろ?
1年もの間、俺に抱かれて愛されて喜んでたくせに、何を今更、だ。」



……。

もう。そんな言い方。


「お前は俺のものだ。他の男になんて触れさせない。
渡さない。死ぬまで…死んでも俺の女だ。」


抱き寄せられ見上げた薄茶色の瞳。


なんてキザなセリフを真面目な顔して言うんだろう。


クラクラする。


いつまでも飽きることなく益々好きになっていく。




「泰斗、あたしだけ?」
「当たり前。」
「どれくらい愛してる?」
「お前に触れる男全てを殺しかねないくらい、お前だけを愛してる。」
「犯罪だけは止めてね。」
「理性があるからな。でもそれくらいの気持ちでいる。」
「あたしの全てを懸けてあなたを愛してるわ、泰斗。」



かのこの言葉にフワッと赤く染まる頬。



「待っててくれてありがとう。
これからもよろしくね、旦那様。」


そう言うと赤く染まった頬にキスをした。