大輔と住んでいたマンションを、かのこは出た。


入れ替わりに美那が住むからだ。


そして。


大輔と美那は式を先に延ばし、籍を入れた。
晴れて吉崎美那から斉藤美那へ。

幸せな2人にはきっとすぐ子供が出来ることだろう。



そして。



かのこは如月のマンションへと越してきた。

荷物は下着と服のみ。


最低限でいいと泰斗に言われたからだ。



越してきてその意味はわかった。


全て泰斗が揃えていたからだ。



確かに収入はいい。

だが無駄を嫌うかのこは眉を寄せた。



「泰斗…無駄遣いしないでってあれだけ言ったのに…。」


とにかく食事から何から、節約癖があるかのこにとってそれは莫大な額の無駄遣いでしかなかった。



「お前にしてやりたいんだ。かのに使うお金は無駄なんかじゃねぇよ。」



背中を向けたままそう言う。


「取っておかないと…先々困るかもしれないじゃない。」

「困らねぇよ。」



聞き入れる耳はないらしい。


「もう…ちゃんと相談してね。」


こういうとこは強引なんだから。
なんなのかしら…。



居心地は最高によかった。



大好きな人と毎日一緒に居られる。
同じく空間で同じことを共有できる。
大好きな腕の中に時間を気にせず居られる。



幸せを実感していた。