程なくして如月と美那が両親に挨拶をするためにやって来た。



いつものようにスーツ姿。

タイビンとカフスはかのこがプレゼントしたもの。


カフスは新しく買いに行ったのだ。

また内緒で同じ店に買いに行き、同じ琥珀で違う形の物を選んだ。


プレゼントにするとなんだか仰々しくなる気がして、簡易包装してもらい。



泊まった翌朝、支度を手伝う振りをして新しいカフスを付けた。



瞬間、泰斗の見開かれた目が忘れられない。


ビシッと決めた泰斗は、自分の彼氏だけど惚れ惚れするほどかっこいい。


薄茶色の髪を後ろに流し、同じ薄茶の瞳は銀縁のメガネの奥で優しく笑う。



「おじさん、おばさん、ご無沙汰してます。」


にこり、と笑うその顔が大好き。


「しばらく見ない間に如月君はイケメンになったなぁ。」



…パパの口からイケメンなんて言葉が出るなんて。驚いた。



「おじさんみたいになるのが目標なので。」


したり顔で笑う如月を父は優しく見ていた。


「かのこを大切にしてくれてるんだな。あの時の事、昨日の事のようによく覚えてるよ。かのちゃんをくださいって…本当に言うようになっちゃったんだね。」



そう言われた途端、泰斗の顔が赤くなる。

「ずっと…ずっとかのこだけを見てきました。女性は他にもたくさんいるはずなのに…俺にはかのこしか見えなかった。
それは今までもこれからも変わりません。


かのこを俺にください、お願いします。


幸せにします、必ず、誰よりも幸せに。」



そう言うと泰斗は両親に頭を深く下げた。




その様は、美しくすら見えた。



「泰斗…」


手を取り見つめ合う。


「反対する理由がないよ。如月君の気持ちはあの時からよく知ってる。
よろしく頼むよ、自慢の娘だ。」



笑う父の顔は、今まで見た中で一番穏やかに見えた。


「お許しを頂いてすぐに言うのは何なんですが…かのこと一緒に生活したいと考えています。
大輔と一緒に仕事をしているとなかなかプライベートで時間を作れないんです。」


「人使いが荒いんだな、大輔。」


ニヤリ笑う父と泰斗。

「よく言うよ。忙しいのは初めから分かってたことだろ。かのこが好き過ぎて離れたくないだけだろ。」



大輔の反撃に若干赤い顔をした泰斗は、しらっと返す。


「当たり前だろ、かのこがいなきゃダメなんだから。」


これにはかのこが赤くなる。



「いいんじゃないか、それで。

それと…さっきから居心地悪いんじゃないかな、彼女が。」


父の言葉に皆が振り返るそこに、美那が待っていた。