おかげでフジタの社長令嬢からは嫌がらせをされ。



言い逃れの婚約者になったはずが、当の本人が本気モードになり。



デートだと連れ去られ、プレゼントだと指輪を贈られ。




全ては自分可愛さに親友に話を振った兄がいけないのだ。



好きでもない男に婚約者に仕立て上げられ、益々自分の恋愛からも遠ざかってしまっている。



なんとかしなきゃ。



指輪を返して。



誤解を解かなきゃ。



なのに、それをあざ笑うかのように専務…如月 泰斗はかのこを構うのだ。



まるで本当の恋人のように、慈しむ目でかのこを見、触れるのだ。




戸惑いが膨らむ。



兄の親友、という立ち位置だった筈の如月が。



どんどん『男』として見えてくる。



それが、とてつもない恐怖に感じてかのこは前に進めない。



崖っぷちに立っている状態なのだ。