「かの?大丈夫か?」



耳元で声がして意識が現実に戻ってくる。



重い…体を動かすことが出来ない。
手を動かそうとするものの、思うように動かせなくて途方にくれる。


「動かせない?力入らないのか?」


身体を起こし、かのこを見やる如月。

…なんだか恥ずかしいのに、顔を隠すことすら出来ない。


「して欲しい事あれば言えよ。」


言おうとしたが、声が出ない。


「、、、」


そんなに叫んだりしてないと思うんだけどな…恥ずかしい。


「何か飲むもの持ってくるよ。待ってろ。」



ベッドから降りた彼の後ろ姿を見る。


なんか…余裕あるその姿が憎い。

慣れてるんだろうなぁ…。


自分は初めてなのに、如月は慣れてるのがなんだか納得できないのだ。



仕方ないのは分かってる。



涙が出てきた。嫌だ。こんなことで泣くなんて。



「とりあえずミネラルウォーター…どうした?どこか痛むのか?」


ペットボトル片手に戻ってきた如月がかのこの涙を見て慌てたように駆け寄る。



「、、、」


横になったままゆっくりと首を横に振る。


目尻をつたって流れ落ちた涙を如月が指で拭う。



「何か辛い?飲めるか?」


身体を支えてもらい起き上がる。

痛いところはないけど…全身筋肉痛みたいや感じだ。


ゆっくりと水を口にする。


「あ…」


口元を伝って落ちた水が、シーツに滲む。

「大丈夫か?」

優しく微笑む如月の顔を見たら、幸せがシーツに滲む水のようにじわりと心に染みた。