到着したのは…。



この辺りでも人気1・2位を争う有名ホテル。



煌びやかなエントランス。


洗礼されたドアボーイ。


シャンデリアが輝くここに…何故来たのだろう。


「かの、おいで。」


手を差し出されて、不安だったかのこは素早く手を重ねた。


「緊張する?」

「しますよ、当たり前じゃないですか。」


ははは、と笑う如月は何故かしら場慣れしてるように見えた。



…ほら、こうやってエスコートするのに慣れてるってことは、経験があるからよ。あたしをずっと好きでいた、なんて話は大輔の思い込みだわ。



そう思いながらも、ドキドキは高まって行く。



「予約していた如月です。」


ホテル内のレストラン。


フレンチの…有名店。



予約?わざわざ?


何かある。そう思わざるを得ない。



「ここによく来るんですか?」


そう聞くと首を横に振った。


「オヤジから勧められたんだよ。」


おじさんに?
あ、なんか納得だわ。おじさんに似合いそうな雰囲気のレストランだもの。



そう思っているとふっと息を吐き出し、如月は席につくなりおもむろに言った。


「かのこ、以前渡した指輪を返して欲しいんだ。」