「逃げるなよ。連絡先教えてから、行けよ。」


強引な態度。


なんだか変わったな。
そんなもんなのかな。



渋々連絡先を交換して足早にその場を離れる。


が、すぐにメール着信。


【彼氏いる?】


…は?

なんなの、コレ。


関係ないじゃん。そう思ったから、返事はしなかった。






社に戻るとなんだかホッとする。


アットホームなのはこういう時に助かる。
落ち着けるから。



「だ…社長。」


ついつい、名前で呼びそうになるのをこらえる。


ケジメけじめ。


「ん?どうした?」


社長室を覗き込み、話ができる状態なのかを確認してから室内へ入る。

室内へ入ってしまえば周りからシャットアウトされる。


兄妹として会話ができる。



「ね、いきなり彼氏いる?って聞くってどういう意味かな?」


…大輔は大きな目を更に大きくしてから吹き出した。


「なんだよ、泰斗そんなこと聞くのか?」


あー、間違いが生じてるな、コレ。


「如月さんじゃないよ。他の人から言われたの。連絡し辛いから…やめといた方がいいよね。」



そう言うと大輔を見る。


難しい顔をしていた。


「やめとけ。お前には泰斗がいるだろ。」


…だからなんで如月さん…。




「まあいいや、だよね、やめとこ。会うことないだろうし…」


そう言い社長室を出ようとしたかのこに、大輔は問う。



「泰斗が嫌いか?」


…わからないって言ってんじゃん。



いつもならそう言うところだ。



でも、ゆっくりと首を横に振ることしか出来なかった。


「泰斗を知ったらお前は他には目が行かなくなるよ。それは保証するから。」


?どういう意味なの?

「あいつは一途なんだよ。

もうずっとお前に恋してる。気付いてやれよ、かのこ。」



背中に語りかけられた兄の言葉。


わからない。


如月さんの気持ち。


自分の気持ちも。