「…紗奈!李!!」



来るはずのない人の声が聞こえる。



ゆっくりと声のする方を向くと、涙でぐちゃぐちゃの綾女とチャラ男先輩が走ってきた。



綾女がチャラ男先輩に言ったんだ。
全く余計なことして。



でもチャラ男先輩が来た理由はきっと私じゃない。



「…夕里!!」



北村さんの明るい声。
さっきの悲しそうな顔とは違ってどこか弾んでいてすごく嬉しそう。



北村さんは好きなんだチャラ男先輩のことが。



いくら恋愛ごとに鈍い私にだって分かる。
あの表情と声の違いを見れば。



私は私を見てさらに泣き出した綾女の方へと向かう。



ごめんね、綾女。
いつも心配ばかり、いつも涙ばかり流させてしまって。



でもこればかりは譲れないんだ。
大切な約束だから。