すると袖を離した手首を掴まれ、気付けば夕里に強く抱き締められていた。



「…ねぇ、李。
パリは確かにここからだと飛行機に乗るほど遠い。
でも一枚の地図で見ると、近く見えるんだよ。


だから考えすぎないで。俺は空じゃない、李に会いに行けるところにいる。
それでも大丈夫なんて確信的なことは言えないけど一つ確信的なのは、約束は必ず守るよ」



そうだ、夕里と約束した。



必ず私の元に帰って来るって。



私はちゃんと夕里の帰る場所にならなきゃいけないんだ。



夕里が私との約束を必ず守るって言ってるんだから、大丈夫。



だから私も約束を守って待つんだ、夕里の帰りを。



「……約束破ったら承知しないからね?」



たくさん流れていた涙もいつの間にか止まっていて、気付けば笑顔になっていた。



夕里も私の笑顔を見て、ニコッと笑った。



「…そっちもね?」



夕里は私に触れるだけのキスをして、また歩き出した。



綾女と雪菜ちゃんも涙目で夕里の背中に手を振っている。



夕里。行ってらっしゃい。



私も頑張って北村さんを助けるから、夕里も頑張ってね。



そして笑顔で再会しようね?



薬指についた指輪を触り夕里の姿が見えなくなるまで、その後ろ姿を見つめた。