アタシに何かあるのかと思いつつも、車のドアを開ける。



ドアを開けると、母親の足元にいたのはあの勇敢な子供だった。



「…先ほどはこの子の危ないところを助けていただきありがとうございました。
お礼を言っても言いきれないほど、感謝しております。

ほら、あなたもお姉さんにお礼を言いなさい」



母親の後ろに隠れていた子供は、母親に促されて前に出た。



そしてパトカーに乗り込んでくると、座ってアタシを真っ直ぐに見つめてきた。



「…あのね、僕、お姉ちゃんみたいにママをまもれるくらい、強くなるよ!
たすけてくれて、ありがとう」



包帯が巻かれたアタシの手を優しく握り、ジッと握った手を見ている。



なんだ、これ。



なんだ、この高ぶる感情は。



"ありがとう"なんて言われたの初めてだ。



子供は「痛みのなおるおまじないがあるんだよ!」と言って、痛い痛いの飛んでいけ!とアタシの痛みをどこかに飛ばしてくれている。



子供が握るアタシの手から、暖かさが体中に広がっていく。



こんな暖かさ、初めて感じる。



人助けをすると、こんなにも暖かくなるのか?



そもそもアタシは人を助けたのか?



アタシが目立ちたくてしたことは、人助けだったのか?



アタシは"いい人"なのか?