「…だって先輩は怪我をしてまで誰かを庇って助けた。
それは立派な"いい人"ですよ」
少なくとも私はそう思います。
上から言うようにだんご虫は話す。
こいつも馬鹿なんだ。
だからアタシのどこを見て"いい人"って言ってんだよ。
だんご虫の言ってるのは、表面上のアタシ。
傍(はた)から見れば身を艇して子供を助けた女子高校生に見えるんだろうけど、
「…アタシはただ目立とうとして、ああしただけだよ。
子供を助けようだなんて思ってない」
本当はこれなんだよ。
目立ちたかったから庇っただけで、助けたつもりなんてないんだよ。
アンタみたいに心底人助けしたって人じゃないんだ、アタシは。
すると背後からだんご虫がクスッと笑った。
「…先輩のしたことの真意はすぐに分かりますよ」
だんご虫の言ってることが更に意味不明で、イライラしてきた時。
コンコン
誰かがパトカーの窓をノックした。
だんご虫の方を向いていたアタシは、また窓の方を向く。
そこにはあの時人質になっていた、母親がいた。