あれから時間が経って、アタシは目を覚ました。



目を開けるとそこはもう事件のあったスーパーじゃなくて、パトカーの中だった。



体が毛布に包まれていて、切った掌にも包帯が巻かれていた。



「……気がつきました?よかった」



横から声が聞こえてその方を向けば、だんご虫が微笑んでアタシを見ていた。



なんでこいつがここにいるんだっけ?



あ、そうだ。
確か煙幕の中、アタシを助けに来たんだ……



「……早苗と花織…は?」


「…今は警察官に詳しい事情を聞かれてます。
客と店員を非常出入口に誘導して逃がした英雄だって言われてますよ」



だんご虫はクスッと笑って窓の外を見た。



釣られて窓から外を見れば、早苗と花織は客と店員に手を握られ感謝されてるのが分かる。



そっか、全員助けられたのか。



アタシだけの犠牲で済んでよかった。



「…時雨にアタシ等のこと聞いたのか?」



早苗達を見たままだんご虫に問いかける。



でもだんご虫は何も答えなかった。
きっとイエスなんだろうな。



チッ、ベラベラと喋りやがって。



後でキツく言ってやる。



どんな言葉を時雨に言ってやろうか考えていると、急にだんご虫が口を開いた。



「…武井先輩は本当はすごくいい人なんですね」



……は?何言ってんだこいつは。



アタシのどこがいい人に見えるんだよ?



アタシはただの目立ちたがりの悪餓鬼だよ。



「…アタシのどこ見てそれ言ってんの?」



こんなにだんご虫と話してるのは、意識がもうろうとしてるからか。



でもアタシが問いかけたら、だんご虫は普通に返事をしてくる。