家を出てすぐに綾女の姿が見えた。



綾女に駆け寄ると、私の足音に気付いた綾女がこっちを向いた。



「おはよ、李。今日はちょっと家出るの遅かったね?」


「…ちょっとテレビ見てたら遅くなっちゃった」



「李がニュース見るなんて!」と綾女は態とらしく驚いてたから、ちょっとムッとして綾女の頬を引っ張ってやった。



そして先に歩き出せば、「ごめん〜」と言って私の後を追いかけてくる。



そんないつもの綾女に安心した。



北村さんと武井先輩達とぶつかってから、綾女は平然を装ってどこか元気がなかった。



北村さんに"人殺し一家"と言われたのがだいぶ昔の傷に疼いたようだった。



耳を塞いで座り込んでた綾女だったけど、泣かないように堪えてた。



頑張って自分の"過去"と戦ってた。



そこにはもう昔みたいに逃げようとしてる綾女はいなかった。



ちゃんと自分の"傷"を抱き締めて生きてるんだ、綾女は。



私も頑張らないと。